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「うわぁ! うそ、うそ! ここっ!?」

 私は興奮しながらそうルーカスに問いかけた。

「はい。ここが、グランシード王国の王都、シュミラークです」

 あれから、さらに一日ラクダにのり、私はついにグラン ...

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 せまりくる砂嵐。それはやがて小さな竜巻となって、ラクダに乗る私たちのまえに立ちふさがった。

「ちょっとちょっとルーカス!」

 私は周囲を巻きこまんとする竜巻に慄く。こんなの、見たことない。私はまえに座っている ...

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 アンドリューたちのもとへもどった私は、お城でのことが夢だったみたいに普段どおりの生活を送っていた。

 約ひと月、ルーカスとは会っていない。

 その間、私はたくさん考えた。ルーカスに対するこの気持ちをなんと呼ぶ ...

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 お城へもどると、マリーが涙を浮かべながら出むかえてくれた。

 長旅で疲れた体を湯船でほぐし、早々に寝床につこうとした。自室の扉をあけると、なぜかルーカスがいた。

「ローゼ。お話ししたいことがあります」 ...

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「ローゼ。ローゼリッタ」

 やがて、甘く低い声が耳の奥をなでていく。

「もういいですよ。攻めてきた者たちは、すべて縄にかけました」

 固くつむっていた目をひらくと、私をのぞきこむように見つめてきてる ...

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 ルーカスと私は、予定どおり城を出た。兵たちは、本当に誰ひとりついて来なかった。
 いったいこの国はどういうつもりなんだ。

 城を出て馬に乗り、そろそろお尻が限界となりはじめた三日目。
 私たちは、私のアジ ...

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 私はルーカスに気まずい思いを抱いていた。

 平然とキスしていいかと尋ねたルーカスの胸の内を、ぜひとも聞いてみたい。

 そんな悶々とした思いを抱える私とは違い、ルーカスはいつもと変わらず、のほほんとした雰囲気で ...

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 その日の夜、いつものようにルーカスが私の部屋をたずねてきた。

 顔をあげ、まっすぐルーカスの顔を見つめる。数日ぶりにしっかりと真正面から見たルーカスの顔は、なんだか疲れているように見えた。

「ルーカス、お疲れ ...

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 ルーカスと小競り合いをした日から、私とルーカスの間には微妙な空気が流れだした。

 ルーカスが私の部屋をたずねてくるのは変わらないが、ふとした瞬間に会話がつづかなくなり、沈黙が流れる。
 いままで、お世辞にも仲良し ...

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 ルーカスと町へ出てから、数ヶ月が経過していた。

 一度町へ出てからというもの、私の生活はすこしだけ変化していた。

 ルーカスと会話を重ね、町へと繰り出しては王都の珍しいものや、甘いものを堪能するという、どこぞ ...

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 ルーカスの案内で訪れた孤児院は、白塗りの壁が輝き、それこそ貴族の屋敷のように広々としている、とてもきれいな場所だった。
 
 孤児院というと、どこか暗いイメージがあったが、ここはそんな場所とは真逆と言える。

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「で、ラッキーアイテムだっけ?」

 食事をとりながら話し合った結果、ルーカスは占いのラッキーアイテムが欲しいらしい。
 こだわりすぎだとも思うが、その占いが百発百中と言われてしまえば、従わないわけにはいかない。

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 ダンスパーティーの日から二日後、私はルーカスに連れられて王都へと来ていた。

「これって、一応お忍び?」

 私はとなりを歩いているルーカスを見あげた。

「はい。私はたまに町に出ていますので、道案内は ...

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 マリーを探して視線を飛ばすと、マリーは、盗賊頭、アンドリュー・レゼッタと張り合えるだろう素早さで私の前に姿をあらわした。

「ローゼリッタ様、いかがされました?」

 あの速さで服や髪がなにも乱れていないマリーに ...

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 城の中を探検した日から翌日、ふたたび私のレッスンは再開された。
 時間がないからとスパルタ教育がほどこされた。おかげで私は、しぼりたての雑巾のようにしわくちゃだ。

 そして、約一週間という、短い期間のダンスとマナ ...

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 ダンスにマナー、この三日間、私は慣れないことの連続で疲労しきっていた。

「ローゼリッタ様、つぎはマナーのレッスンですわ」

 マリーにそう声をかけられて、私は食事を終えたばかりのテーブルにぐでっと寝そべった。

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 はじめてのダンスレッスンを終えた夜、部屋でマリーの淹れた紅茶を飲みながら足をマッサージしていると、軽いノックが響く。
 マリーが対応しつつ部屋を出ていったのを見て、私は誰が訪ねてきたのかすぐにわかった。

「ローゼ ...

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「ローゼリッタ様、私がダンス講師を務めさせていただきます、オズワルトでございます」

 そう名のった女性は、すこしつり上がった目にかけられているメガネを片手であげ、真っ赤な唇を不敵に持ちあげた。

 見るからに厳し ...

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 ルーカスの目をまっすぐに見つめて、私はルーカスの懇願をはねのけた。
 ルーカスは苦笑いをし、私の顔に手を伸ばして頬をひとなでする。

「この近辺の国が滅んでも、かまわないと?」
「残念だけど、私はお国とは縁 ...

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 ルーカスの鋭い赤い目に射ぬかれ、私の背中を冷や汗が伝っていった。

 ルーカスはすぐに私から視線をそらすと、赤い石のネックレスの表面を軽くなで、ゆっくりと首から下げる。

「残念ながら、私も実際に見たことはないの ...

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 布団が変わると寝つけないというのはよく聞くが、私は盗賊の身であるため、たとえ草の上だろうと、わらの上だろうと、眠れる自信がある。その代わり、人の気配にはすこし敏感だ。
 ふと、空気の流れが変わった気がして目がさめた。 ...

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 その日の深夜。
 町は寝静まり、暗闇に包まれる。

 私は昼間のうちに確認しておいた二階の部屋につながるバルコニーに、フック付きロープを投げつけた。狙いどおり、フックは音ひとつさせず、柵に吸いつくように絡みついた。 ...

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 アンドリューのもとを離れ、三日目。

 これまでの道のりは順調だ。

 目的地が王都だからか、整備された道が多くなってくる。
 地面は石畳などなくむき出しであるが、商人や馬車の往来があるため、地面のおうと ...

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「はー、なるほどなぁ」

 事情を話し終えると、アンドリューは腕を組んで立ちあがった。私も立ちあがり、アンドリューに頭をさげる。

「ごめんなさい。軽率だった」
「いや、おまえは謝るようなことはなにもしてな ...

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 それは数日前のことだ。

 10歳未満の子たちのひとりに、エミリアという女の子がいる。
 その子が毎日抱いていた黒猫のぬいぐるみがなくなってしまったという、小鳥が足をつつくようなささいな事件だ。

 なん ...

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 その日、私はおたずね者となった。

「なにこれぇええ!?」

 叫び声をあげながら、私は手に持っていた新聞を目の前のテーブルに叩きつけた。
 そのまま頭を抱えて、砂がむきだしになっている地面にしゃがみこむ ...